水封式真空ポンプ

水封式真空ポンプは、封液として水を用いながら気体を圧縮・排気するしくみを持つ装置です。内部で水環を形成し、偏心インペラの回転によって密閉性を確保しながら気体を徐々に押し出すため、蒸気を多く含むガスや湿潤ガス、腐食性ガスが混じる環境でも安定した排気を実現できます。

ここでは水封式真空ポンプ特徴を解説し、主要な国内メーカーと製品を紹介します。各社の取扱になる情報をまとめています。

水封式真空ポンプとは

水封式真空ポンプは、ケーシング内に封液として水を充填し、その中を偏心したインペラが回転することで「水環(ウォーターリング)」をつくり、圧縮室の容積変化を通じて気体を排気します。具体的には、回転に伴って生じるケーシング内の空間が拡大するときに気体を取り込み、縮小するときに圧縮して排気口へ押し出します。このとき封液である水がインペラとケーシングの間をしっかりと密閉し、金属部品同士が直接摩擦することを防ぎます。

また、封液がガスを一部吸収する性質を利用できるため、水蒸気や湿潤ガス、さらに腐食性ガスや可燃性ガスも安全に排気することが可能です。封液として純水を用いる場合は到達圧力が水の蒸気圧に制限され、おおむね数千パスカル(数十トール)程度になりますが、封液を油や有機溶媒に切り替えたり、空気エジェクタを併用したりすることで、より低い圧力まで真空度を高める工夫が取られることがあります。シンプルな構造と耐久性を両立させつつ、湿潤ガスを扱う工程や腐食性の高い排気がある環境で利用される点が、油封式や乾式の真空ポンプと比べたときの特徴です。

水封式真空ポンプメーカー一覧

以下では、水封式真空ポンプを製造・販売する国内の主なメーカーを紹介します。購入検討の際は各製品例の特徴を踏まえつつ、自社の運用環境や合うかどうかを比較してください。

神港精機

神港精機は、長年にわたり真空ポンプを手がけてきたメーカーで、水封式真空ポンプ「SWシリーズ」をラインナップしています。封液としての水を通じて引火性や腐食性ガスを安全に排気できる構造を重視し、さらに軸封部には標準でグランドパッキンを採用しつつ、オプションでメカニカルシールを選べる仕様にしています。

これによりパッキン増し締めの手間が減り、メンテナンス性が高まるよう工夫されています。吸気口に空気エジェクタを取り付ければ封液の蒸気圧限界を超えて真空度を高めることも可能で、水蒸気の多いプロセスラインや研究用装置など幅広い用途で採用されています。

取扱製品例

SW-100

引用元:神港精機公式HP(https://www.shinko-seiki.com/products/127/)

SW-100は、SWシリーズの代表機種として定番の1段式モデルです。排気速度は1250L/min、到達圧力は約17Torr(約2.3×103Pa)であり、真空濃縮や乾燥、蒸留装置の中間排気などに向いています。標準のグランドパッキン軸封のほか、オプションでメカニカルシール仕様を選択できるため、長期間の運転でも封液漏れを抑えつつメンテナンスを簡素化できます。

さらに耐食仕様のSW-ASシリーズでは、主要部材にステンレスSUS316を採用し、強酸や強アルカリのガス排気にも対応できる設計です。一方、環境配慮型のSW-Cシリーズは、封液を循環再利用して排水量を低減することで、排水処理コストの削減を図るモデルです。

イワキ

株式会社イワキは、化学ポンプ分野において長い歴史をもち、水封式真空ポンプ「MEAシリーズ」を展開しています。潤滑油を使わずに二段インペラ構造を採用することで、クリーンな排気を必要とする食品や医薬品分野で重宝されています。モータ直結型の直感的な設計により装置組み込みが容易で、排気セパレータや定流量弁を標準装備しているため、設置後すぐに安定運転が可能です。加えて封液を一部循環再利用する節水仕様も用意しており、ランニングコストや環境負荷を意識するユーザーに向けた設計がなされています。

取扱製品例

MEAシリーズ

MEAシリーズは中型機として多くの現場で使われているモデルです。排気量は約75m3/h、到達真空度は約2.3kPa(約17Torr)を確保し、蒸気や水滴を多く含むガスも安定して吸引します。潤滑油を必要としないため、排気ガスに油分が混ざることがなく、食品工場の脱気工程や医療機器の吸引装置など、クリーンな環境が求められる現場での採用例が多く見られます。

封液循環ラインを標準で備えており、給水量を約60%削減可能です。また主要部材にステンレス鋳鋼(SCS13)や工業用樹脂(PPO)を採用し、耐腐食性と耐久性を両立しています。

大阪真空機器製作所

大阪真空機器製作所は産業用液封式真空ポンプを得意とするメーカーで、「Wシリーズ」を中心に多彩な封液対応を特徴としています。封液に水以外の油や有機溶媒を選べるようになっており、半導体製造の乾燥プロセスや化学薬品製造で発生する有機溶剤蒸気を安定排気するラインでも利用されています。

シングルステージの基本構造で、中真空域までの排気性能を手堅く抑えるだけでなく、必要に応じて大気吸入型のエジェクタを追加することでさらに低い到達圧力を実現するWAシリーズやWBシリーズに発展させることも可能です。封液循環運転や熱交換冷却機構を組み込んだクローズドループ仕様では、排液量を大幅に低減できるため環境負荷の軽減に役立ちます。

取扱製品例

W150S

引用元:大阪真空機器製作所公式HP(https://www.osakavacuum.co.jp/products/detail0075.html)

W150Sは、Wシリーズのなかで排気速度約150m3/hを担う代表的なモデルです。主に製鉄プラントや化学プラントで使われることが多く、大流量のミドルレンジ真空源として活躍します。封液は通常の水に加え、用途に応じて耐食性の高い液体を選択できるため、有機溶剤を扱う装置や高温ラインにも適用できます。

クローズドループ仕様により排液をほとんど出さずに運転できるため、排水処理コストを抑えるだけでなく、クリーンで持続性のある運用を実現できます。

ニクニ

株式会社ニクニが手がける「ZVシリーズ」は、二段式液封式真空ポンプを中心にしたラインで、二段のインペラを直列に配置することで高い真空度を効率よく達成できる点が特長です。金属同士の直接摩耗が少ない構造で、腐食性ガスや湿潤ガスを多く含む環境でも安定稼働しやすく、特に化学プラントや半導体関連装置で使われることが多い傾向があります。

部品単位で材質変更や交換が可能なモジュラー構造を採用しており、腐食対策として内部部品にハステロイ合金などを選ぶことができるため、高耐久を求める現場にも対応します。さらに、ユーザーの要求に合わせたルーツポンプのブースト構成など、真空システム全体の提案力も強みです。

取扱製品例

ZV638

ZV638は、吐出量200m3/h級の大型モデルで、高真空域(数十Paオーダー)まで効率良く到達することを目指す設計です。腐食性ガスが発生する工程では、内部の主要部品にハステロイ合金を採用できるため、耐食性を必要とする環境でも長期間の安定運転が可能です。

二段インペラによる圧縮効果で乾燥や蒸留、真空乾燥など高真空が求められるプロセスに適用されており、部品交換もユニット化されていることで、保守コストを低減しつつ海外拠点での現地修理にも柔軟に対応します。

スペック・ジャパン

スペック・ジャパンは、ドイツSpeck社の水封式真空ポンプを日本国内で取り扱う企業です。「Vシリーズ」はSpeck社製の単段式液環ポンプで、B35フランジ直結のインペラ直結モータ設計を採用しています。9.5m3/hから445m3/hまで幅広い吸込量をカバーし、約33~40mbar(約3.3~4.0kPa)程度の到達圧力を示します。

主要構造部にはステンレス鋳鋼が使われ、50Hz運転時に65~72dB(A)程度の騒音値を維持することで、実験室や装置内蔵用途でも静音性を確保しています。オイルフリー構造のため排気に油分が混ざらず、化学・食品・医療機器などクリーンな真空環境が求められる現場で活用されています。

取扱製品例

V-55

引用元:スペックジャパン公式HP(https://speckjapan.com/archives/183)

V-55はVシリーズの代表的な中型機で、排気量約48m3/h、到達圧力約33mbar(約3.3kPa)を保ちます。封液は最大80℃まで対応でき、乾燥ガスであれば200℃、飽和ガスであれば100℃までの吸気温度に耐える樹脂シールを用いることで、高温湿潤環境でも安定運転が可能です。

堅牢なモノブロック構造とインペラ直結モータにより振動を抑え、長期稼働でも低メンテナンスを実現します。押出機の樹脂ガス抜きや真空殺菌機、ペースト状物質の脱泡工程など、用途例が多彩であることが特徴です。

鶴見製作所

鶴見製作所(ツルミポンプ)は、大型ポンプをはじめとするポンプ機器全般を手掛けるメーカーで、水封式真空ポンプ「VMWシリーズ」を提供しています。VMWシリーズは一軸二段式の構造を採用し、一作動形インペラを二段直列に配置することで高真空性能を達成します。封液としての水を利用し、潤滑油を不要とした設計ゆえに金属摩耗がほとんど発生せず、連続運転でも安定した真空度を維持します。

中型機では到達圧力約2.3×103Pa(約17Torr)、排気量は毎分数百リットル程度を示し、さらに吸気側にエジェクタを追加することで、約0.8kPa(約6Torr)程度まで真空度を高めることが可能です。ウェルポイントシステムとして地中浸透水の吸引用途や、地熱発電プラントでの真空保持など、特殊用途にも応用できる柔軟性が評価されています。

取扱製品例

VMW-中型機

引用元:鶴見製作所公式HP(https://www.tsurumipump.co.jp/liquid-ring/products/)

VMW-中型機は、二段インペラ構造によって高い真空度を安定して提供するモデルです。到達圧力約17Torr(約2.3×103Pa)を示し、排気量は950~3200L/min程度まで幅広いラインナップがあります。空気エジェクタを装着するとさらに約6Torr程度まで真空度を向上でき、凝縮系や地中浸透水処理など複合的な工程にも対応します。

VD型の小型直結モータタイプから、大規模復水器向けのパッケージ(VMAF型)まで揃っているため、用途や必要スペックに合わせて選択できます。

宇野澤組鐵工所

宇野澤組鐵工所は、真空ポンプの草分け的存在として歴史あるメーカーです。水封式ポンプには、一般産業向けの「SRH型」と、医療分野向けの小型モデル「SRU/SRMシリーズ」があります。SRH型はシンプルな偏心インペラを1回転ごとに回す構造で、部品点数が少なく故障しにくい仕様です。主に食品・化学工業の真空乾燥や脱臭、真空鋳造などで使われ、大型遠心ポンプを呼び水する用途にも適しています。

SRU/SRMシリーズは医療ガス設備向けの小型設計で、封液を内蔵タンク内で循環させるセルフサーキュレーション方式を採用し、断水時でも運転が継続できる点が特長です。50年以上にわたり病院の中央真空源として採用されており、静粛性とメンテナンス性が高い評価を得ています。

取扱製品例

SRH型

引用元:宇野澤組鐵工所公式HP(https://www.unozawa.co.jp/product/water/)

SRH型は偏心インペラを用いた一段式モデルで、信頼性の高い構造を持ちます。材料選択も柔軟で、標準は鋳鉄製ですが、腐食性流体向けにステンレス製などへのカスタマイズにも対応しています。食品や化学プロセスの脱水、蒸発、真空乾燥など多様な用途で使われるほか、大型遠心ポンプの呼び水用真空源としても活用されています。

サクライ・エンジニアリング

サクライ・エンジニアリングは長野県に拠点を置き、小型水封式真空ポンプの開発・製造を専門とするメーカーです。代表製品である「VLWシリーズ(エルモ型)」と「VVWシリーズ(ペーン型)」は、いずれも非常に小型でありながら、必要十分な真空度と排気速度を確保している点が特長です。銅合金製インペラと耐久性に優れた材料を組み合わせることで、小型ながら長寿命を実現しています。

手のひらサイズのVVW-40型やVLW-260型など、重量も数kg程度の製品をそろえ、医療・食品・バイオプラントなど小型装置に組み込む用途で多数の採用実績があります。国内生産によるサポート体制が整備されており、きめ細かい保守・点検対応が可能です。

取扱製品例

VVW-40型

引用元:サクライ・エンジニアリング公式HP(http://www.sakurai-eng.jp/original.html)

VVW-40型は超小型設計が特徴で、到達圧力は約4×10³Paを達成しながら排気速度は40L/min(60Hz時)を確保しています。わずか4kgの質量で装置への組み込みが容易に行える点が評価されており、限られたスペースでも安定した真空を供給できます。

給水接続はRc1/4を採用し、補給水量は毎分1.8Lと省水設計を実現しているため、ランニングコストを抑えつつ連続運転にも対応します。静粛性が求められる研究室や医療機器の内部真空源として、また小型包装機や実験装置などへの搭載例が増えています。

入江商会

入江商会は理化学機器の専門商社として、小型の水封式真空ポンプ「LEM型」と「LEH型」を取り扱っています。LEM型は小型モータ直結のコンパクト設計で、吐出量は3.4~60m3/h程度で、研究室や小型装置の真空源に適しています。LEH型は二段インペラ式の高真空モデルで、50Hz時に到達圧力約2.7×103Pa(約20Torr)を達成し、エジェクタ併用でさらに低い圧力まで引き下げることが可能です。

両シリーズともメカニカルシール軸封を採用し、封液漏れを抑えたうえで定流量弁による最適な封水供給機能を搭載しており、安全な運転をサポートします。材質は鋼(SS)またはステンレス(SUS304)から選択でき、腐食性媒体を扱う現場でも安心して使えます。

取扱製品例

LEH150MS

LEH150MSは二段式インペラを持つ中型機で、吐出量約135m3/h、到達圧力約2.3×103Pa(約17Torr)を実現します。空気エジェクタ併用で約6Torr(約0.8kPa)まで真空度を高められ、大型蒸留装置や乾燥装置の真空源として使われます。メカニカルシールと定流量弁の組み合わせで封液漏れを抑え、封水供給を自動で制御するため、メンテナンスを簡素化しつつ安全運転を維持します。

三浦工業

三浦工業はボイラで知られる企業ですが、近年は水封式真空ポンプ「MEA-37E」を発売しています。MEA-37Eは従来機のMEA-37をベースに、ケーシングや内部構造を樹脂製に変更したことで耐食性を高め、吸気温度対応を従来の60℃から97℃まで広げる改良を加えています。

これにより高温ガスの排気にも対応でき、錆によるケーシング腐食を防ぎつつメンテナンスを不要に近づけています。排気速度は50Hz時に60m3/h、到達圧力は約2.3kPa(約17Torr)を維持し、小規模な脱気・脱泡工程や医療・食品分野での採用例が増えています。

取扱製品例

MEA-37E

MEA-37Eは質量約66kgで、中型の二段インペラ構造を持ちます。樹脂製ケーシングは耐食性が高く、湿潤ガスや腐食性ガスの影響を受けにくくしています。また封液循環ラインにより給水量を抑えられ、ランニングコストを低減できます。

吸気温度対応を最大97℃まで広げたことで、高温蒸気を含むプロセスでも安定排気が可能です。ステンレス製インペラにより衛生面にも配慮され、真空包装機や滅菌機器といった医療・食品用途での導入が進んでいます。

佐藤真空

佐藤真空は真空技術を幅広く手がけるメーカーで、「SBシリーズ」を水封式のラインナップとして展開しています。SBシリーズは据置型の堅牢な設計を特徴とし、小型機では毎分数百リットル、大型機では毎時数百立方メートルの排気量を持つ製品を用意しています。到達圧力は約17Torr(約2.3×103Pa)を達成しており、水蒸気や可燃性ガスをオイルフリーで排気できるため、化学プラントの減圧工程や食品製造の乾燥・濃縮ラインなどで活用されています。

近年はメカニカルシールによる軸封方式を採用し、封液漏れを抑えるとともに低振動設計を進めることで、保守性と信頼性を高めています。自社で真空装置を製造している経験を生かし、装置とセットで最適化されたポンプを提供できる点も強みです。

取扱製品例

SB-25

SB-25はモーター容量1.5kWで、排気量約370L/min、到達圧力約17Torr(約2.3×103Pa)を示す中型機です。鋳鉄製の堅牢なボディを持ち、長期安定運転が期待できます。封液を水として使用し、化学薬品の減圧・脱気や食品濃縮ラインでも安定した真空源を提供します。メカニカルシール軸封により封液漏れが少なく、オプションで封液再循環キットや消音器を取り付けられるため、用途や運用スタイルに合わせたカスタマイズが可能です。

ロダテック

ロダテックはドイツSpeck社の旧総代理店として「VZシリーズ」を取り扱っています。VZシリーズは二段式液環ポンプで、頑丈な鋳造ボディと二段インペラを内蔵し、連続運転時にも高い真空度を維持できる設計が特長です。公称到達圧力は約33mbar(約3.3kPa)ですが、条件によっては数mbar台まで引き下げられるため、静粛性を求められる医療機器や食品工場の滅菌・殺菌装置などでも採用されています。

運転音は60~66dB(A)程度と低く、据付型や直結型など設置環境に合わせたバリエーションを揃えています。材質はステンレス、鋳鉄、銅合金から選択でき、メカニカルシールを標準装備することでメンテナンス性を向上させたモデルも用意されています。

取扱製品例

VZ-140

引用元:ロダテック公式HP(http://www.rodateq.co.jp/speck2/vacuum/vh.html)

VH140は、ダブルステージ(二段式)構造の水封式真空ポンプで、50Hz時の吸引能力は145m³/h、60Hz時は174m³/h、最小吸気圧は33mbarです。ドライガス・湿潤ガスの両方に対応し、騒音レベルは66~79dB(A)、媒体温度は最高100℃、吸引ガス温度は最高120℃まで対応可能です。材質は鋳鉄・非鉄金属・ステンレススチールから選択でき、メカニカルシールを採用しています。また、ATEX承認を取得しており、医療用殺菌機や押出機のガス抜きなど幅広い用途に対応しています。

水封式真空ポンプの使用用途

水封式真空ポンプは、水蒸気や湿潤ガスを伴う工程、腐食性ガスや可燃性ガスを扱う環境での排気に適しています。化学プラントでは反応器から発生する蒸気や揮発性化学物質の排気、製薬分野では溶媒を使った濃縮・乾燥工程、食品工場では真空調理や脱泡処理などに広く使われています。

半導体製造の前処理工程でウェハの乾燥や搬送のために湿気を排除する用途でも水封式ポンプが選ばれることがあります。医療分野では滅菌機や吸引装置に組み込まれ、病院内の静かな稼働環境を維持しながら真空源を提供します。また、上下水道の下水処理場では脱臭工程に利用されるほか、製紙工場の湿潤紙脱水や冶金プラントの脱ガスプロセスにも適合します。

用途に応じて封液を油や有機溶媒に切り替えられる機種もあるため、蒸気蒸留や溶剤回収を伴うプロセスにも対応します。封液の管理を適切に行えば、長時間連続運転を求められる大規模プラントから、小型実験装置まで幅広く活用できます。

水封式真空ポンプの原理

水封式真空ポンプは、インペラと水環の組み合わせによって真空を作り出します。ケーシング内部に水を封液として充填し、その中を偏心配置されたインペラが回転すると、インペラとケーシングの間に常に水環が形成されます。インペラの回転に伴い、ケーシング内部の特定の部分が膨張と圧縮を繰り返すことで、気体を吸い込みながら次第に圧縮して排気口へ送り出します。このとき水環が可動シールの役割を果たし、金属部品同士の直接摩擦を防ぎます。そのため摩耗が少なく、潤滑油を使わない構造でも長寿命が実現しやすいのが特長です。

封液の蒸気圧が到達圧力の下限を規定するため、純粋な水を用いる場合は概ね数千パスカル(数十トール)程度が限界となります。ここからさらに真空度を高めるには、封液を蒸気圧の低い油や有機溶媒に切り替えたり、吸気口に空気エジェクタを取り付けてキャビテーションを抑制しながら到達圧力を下げたりする手法が用いられます。空気エジェクタを併用する場合は、エジェクタが気体を加速してインペラ側に引き込むような流れを作り、封液の蒸気圧限界を超えた低圧領域を実現できます。こうした工夫により、より低い圧力が必要なプロセスにも対応できる設計が可能です。

水封式とドライ真空ポンプ、どちらを選ぶべきか?

真空ポンプを選ぶ際には、排気ガスの性状、求める真空度、運用コスト、メンテナンス性などを総合的に検討する必要があります。水封式真空ポンプは、湿潤ガスや腐食性ガスを伴う環境に強く、金属摩耗が少ないため長時間連続運転がしやすいという長所があります。また、封液を循環再利用することでランニングコストを抑えたり、封液を交換して用途に合わせたりできる柔軟性もあります。

一方、封液としての水を用いる場合は到達圧力が数千パスカル程度に制約されるため、真空度を10⁻³Pa以下まで求めるような高真空用途には不向きです。ドライ真空ポンプは機械接触部に油や水を使わないためクリーンな真空環境を作りやすく、真空度10⁻³Pa以下を安定して得られます。半導体製造や精密機器の製造、研究室の分析装置などではドライポンプが選ばれることが多いです。ただし導入コストや消費電力、定期的なメンテナンス費用が水封式より高めであるため、中真空域までの用途で湿潤ガスを多く含む排気では水封式のほうがコスト面・運用面で利点があります。

運用中のランニングコストを削減したい場合や、排水処理が複雑でない環境であれば、水封式が適するケースがあります。逆に、排水処理が難しく、完全オイルフリーのクリーン排気を必要とし、かつ高真空域が必要なプロセスではドライ真空ポンプを選ぶほうが後々のトラブルを回避しやすくなるでしょう。両者の特長を踏まえ、自社の設備ラインや装置要件に合わせたシステムを検討してください。

オイル不使用・幅広く使えるスクロール型
ドライ真空ポンプメーカー3選

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食品製造向け

アネスト岩田の
DVSLシリーズ

DVSLシリーズ

引用元:アネスト岩田公式HP
(https://www.anest-iwata.co.jp/products-and-support/vacuum-equipment/dry-vacuum-pump/dvsl-500e)

  • 排気経路内にベアリングが無いため、密閉性が向上し衛生面も安心
  • 真空状態でのネリが必要な製麺会社の要望に応えた実例あり
半導体製造向け

宇野澤組鐵工所の
KTSシリーズ

KTSシリーズ

引用元:宇野澤組鐵工所公式HP
(https://www.unozawa.co.jp/product/dry/)

  • 到達圧力:≦0.08Paという半導体製造に適した真空状態を実現
  • スパッタリング装置、イオンプレーティング装置といった薄膜形成プロセスに対応
  • 水蒸気やミストといった小さな水滴もしっかり排出
製薬・化学品製造向け

東製の
スクリュー式
ドライ真空ポンプ

スクリュー式ドライ真空ポンプ

引用元:東製HP
(https://www.dryvacuum-pump.com/wp/wp-content/uploads/anestiwata_dvsl-500e_image.png)

  • 化学反応、蒸留操作などに適した環境生成のため、さまざまな圧力領域に対応
  • 接ガス部は耐食性ガス対策のため、特殊コーティングすることにより錆から守る
  • 化学物質や粉塵の発生を考慮し、少ない部品で分解・組立・洗浄が可能

※KTS030-H(ECOタイプ)最大排気速度:500L/m、到達圧力:≦0.08Pa(2024/5/24時点)

さまざまな真空装置にフィットする スクロール型ドライ真空ポンプのメーカーに注目!

接ガス部だけでなく、各部にギアオイルなども使用していないスクロール型のドライ真空ポンプは、さまざまな使用環境に幅広く対応できるメリットをもっています。
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