ドライポンプとは、油や液体を使用しない真空ポンプです。従来の油回転ポンプだと、オイルミストや油の逆拡散によって空気汚染や油染みを発生させてしまうのが課題となっていました。一方でドライポンプは油の逆拡散の心配がないため、手軽にクリーンな真空を得ることが可能。
そのため、クリーン度が求められる電子・半導体産業やFPD産業などの分野で重宝されているほか、質量分析や電子顕微鏡などの分析装置、真空乾燥工程などさまざまな装置・用途でドライポンプの使用が進んでいます。
ドライポンプのメリットは、何と言っても油や液体を使用しないことです。油や液体の逆拡散の心配がないことでクリーンな真空を得られ、さらに油の補充・交換などといった定期メンテナンスも必要ありません。従来のポンプにあった油による汚染やメンテナンスの問題が解決されたことが、幅広い分野・用途でドライポンプが選ばれている理由です。
一方で、ドライポンプのデメリットは、従来の油回転ポンプと比べて、導入費や運転費が高くついてしまうこと。また、ドライポンプの種類によっては作動音が大きかったり、結構な発熱がみられたり、と使用場所を選んでしまうことも。そのため、ドライポンプの導入を検討する場合は、種類ごとのデメリットについても把握しておくことが大切です。
イオンポンプはノーブルポンプやスパッタイオンポンプとも呼ばれ、超・極高真空の発生に使用される代表的な真空ポンプの1つです。イオンポンプは強力な磁石をはじめ、ハニカム構造の陽極・チタン製の陰極で構成されており、そこに電場を印加する簡単な構造をしています。ロータリーポンプと違って機械可動部を持たないため、騒音や振動が発生しません。
機械的振動や騒音を起こさないことから、分析器や加速器、超・極高真空排気装置、電子線照射装置など幅広い分野で使用されています。
機械的可動部を持たないイオンポンプは機械的振動や騒音を発生させずに高真空を達成でき、さらにほかの機器の動作に影響を与えないというメリットがあります。また、電力だけで使用できるため、夜間の無人運転や遠隔操作に適しているという利点も。そのほか、オイルを使用しないので、油による汚染の心配もありません。
一方で、大流量での排気が難しく、あらかじめ別のポンプで高真空状態を作ってからでないと使用できないのが難点。そのほか、高電圧を使用すること、排気前にベーキングが必要であること、陰極の交換が必要になることなどがデメリットとしてあげられます。
イオンポンプは機械的振動や騒音を発生させないため、高真空と繊細なコントロールの両方が求められる電子顕微鏡や半導体製造装置用のポンプとして使用されています。そのほか、粒子加速器や核融合実験装置、宇宙環境試験装置、電子管などの真空保持ポンプなど、幅広い用途で用いられている真空ポンプです。
クライオポンプは、溜込式真空ポンプの1つです。絶対零度近くに冷却された面に衝突すると凝縮・吸着する気体分子の特性を利用しており、ポンプ内に極低温面を設置して凝縮・吸着した気体分子を排出する構造になっています。
クライオポンプを使えば、高真空から超高真空までの状態を作り出すことが可能。ただし、クライオポンプを用いて気体を有効に排気するには、蒸気圧または吸着平衡圧力が10-8Pa以下でないといけません。
クライオポンプは油等を使用しないため、クリーンな真空を得られるのがメリットです。また、吸着方式のポンプでありながら排気速度が速く、最大排気流量も大きいことが注目されています。気体分子を極低温面に凝縮・吸着させることによって、すべての気体分子を排気することが可能。それにより、超高真空を得られるのがクライオポンプの利点です。
一方で、溜込式真空ポンプという構造上、定期的に気体の放出・再生操作が必要というデメリットがあります。また、気体の種類によってはポンプ内で危険性物質・ガスが生成されることがあるため、気体の再生には注意が必要です。
クライオポンプは、半導体や液晶、ディスク等の電子部品、メガネレンズの製造のほかに、超大型スペースチャンバ排気などに使用されています。