真空ポンプは自動車製造に欠かせないツールの一つです。自動車部品の製造工程では様々な場面で真空処理が行われており、真空ポンプも必要不可欠なツールとして活躍しています。このページでは、真空ポンプが自動車製造でどのように用いられているのか、自動車製造における真空ポンプの必要性について解説します。
自動車を構成する部品は全てではありませんが、その多くで真空熱処理加工を施して作られています。例えば、精密鋳造によって作られるターボチャージャのブレードは、鋳造する前に真空熱処理が行われていますし、エンジン回りの「カム」は、真空焼結による成形と同時に中空シャフトにロウ付けされています。
他にも、自動車部品としておなじみのラジエーターや燃料パイプは、両者を一体に組み立てた状態にしてから、真空熱処理炉でロウ付けしています。といった具合に、自動車製造では様々な部品の製作工程で真空熱処理が行われていますが、真空熱処理炉で真空状態を作り出すのは真空ポンプの役目です。
自動車の製造工程では、初期段階の前工程において、車体や部品の品質を確保するために真空洗浄が行われています。事前に真空洗浄を行うことによって、めっき・塗装など表面処理部品の皮膜の剥がれ、精密部品の組み付け不良、製品の動作不良など、後工程におけるトラブルと品質低下を防ぐことができるのです。
真空洗浄は文字通り真空状態で行う洗浄ですが、空気を脱気することにより、折り重なった製品、複雑形状の製品でも隅々まで洗浄することができます。この真空洗浄技術でも真空ポンプは欠かすことのできないツールです。
真空ポンプにはいくつか種類があり、自動車製造にはダイヤフラム型・ピストン型の真空ポンプが使用されています。
真空ポンプは、ディーゼルエンジンのブレーキシステムや空調システムなどに電力を供給する重要な役割を担っており、真空ポンプが不調または故障すると車両全体の性能・動作に大きな影響を及ぼす可能性があります。真空ポンプが故障する原因として多いのがベルトの破損やユニット内部の電気的問題、真空ホースの故障です。
ガソリン車においても真空ポンプは排気もしくは排気システムに影響を与える傾向があり、適切な保守が行なわれていないとシリンダヘッド部品の重大な損傷につながる可能性があります。真空ポンプが不調または故障しているかもしれない症状としては、燃費の悪さやブレーキペダルの踏みにくさ、エンジン側のオイル漏れ、エアコンが作動しないなどがあげられます。
カーエアコンにガス漏れが発生していると、真空引きに時間がかかる可能性があります。カーエアコンは冷媒と呼ばれるエアコンガスの循環によって冷風が車内に送り出される仕組みになっており、カーエアコンの性能を最大限に引き出すには配管内の空気や水分を追い出す作業が必要です。
これを真空引きと言い、配管の中をエアコンガスで満たすために重要な作業になります。ガス漏れが発生すると真空引きがうまく行なわれず、配管内に空気や水が混入。それにより車内の空気を冷やすのに必要なエアコンガスが減少し、カーエアコンの効きが悪いと感じる原因になります。
自動車製造における真空ポンプの必要性を紹介しましたが、実は真空ポンプには、普通の真空ポンプとドライ真空ポンプというのがあります。ドライ真空ポンプは、ガスを排気する際に「油」や「液体」を使用しないのが特徴です。真空室内を綺麗に保つことができるため、クリーンな排気を出すことができます。
自動車産業でもドライ真空ポンプの活用事例が増えていますが、その理由はまさに、ドライ真空ポンプの使用によって汚れや不純物の少ないクリーン環境を実現できるからです。