半導体製造では真空ポンプが多く活用されています。これは半導体製造において真空状態が必要なケースが多いためですが、なぜ真空状態が求められるのか?その答えは、半導体製造で要求される環境と真空がもつ特性にあります。
半導体製造ではクリーンな環境が求められます。クリーンな環境とは、微小な不純物が少ない状態。大気中には酸素や窒素、二酸化炭素といったさまざまな気体が混ざっており、製造過程に必要な反応を起こすことが難しくなります。
そこで真空のクリーンな状態を用意することで、必要な反応のみを起こしやすくすることが可能に。たとえば成膜や加工などの不純物を混ぜたくない工程では、真空下での作業を進めています。
参照元:サムコ株式会社(https://www.samco.co.jp/company/primer/2018/05/necessity.php)
半導体製造において、プラズマの発生も重要なポイント。たとえばプラズマCVDによる薄膜形成、プラズマドライエッチング、プラズマクリーニング、プラズダイシングなどの用途が挙げられます。真空下でプラズマが発生することで、電子やイオンを用いたさまざまな反応を起こせます。
なお、真空を利用するプラズマ発生装置は低圧プラズマ装置と呼ばれており、真空ポンプを用いてつくられています。
参照元:サムコ株式会社(https://www.samco.co.jp/company/primer/2018/05/necessity.php)
参照元:松定プレシジョン株式会社(https://www.matsusada.co.jp/column/sc_prasma.html)
真空下では大気圧下よりも低い温度で沸騰できます。たとえば水は大気圧下では100℃以上で沸騰しますが、真空下では100℃以下で沸騰。そのため、たとえば対象物を比較的低温で蒸発させたいときは真空状態が適しています。
なお、この特性はインスタントコーヒーや即席ラーメンの製造などでも活用されています。
参照元:サムコ株式会社(https://www.samco.co.jp/company/primer/2018/05/necessity.php)
ドライ真空ポンプで起こりうるトラブルとして、ポンプの圧力が下がらない、異常音がする、ポンプが回転しない、実際に電流値が定格電流値よりも高い、ポンプからの異臭などがあげられます。トラブルの原因としては吸気弁や排気弁の破損、エアフィルターやサイレンサーの目詰まり、吸気管からの漏れ、ポンプ内の異物混入、ポンプ周辺の温度などがあり。トラブルが頻発すると生産ラインに影響するため、定期的なメンテナンスやトラブル対策が必要です。
油回転真空ポンプで真空を作り出すには、真空ポンプ油やロータリーポンプ油などといった潤滑油が必要です。潤滑油にはポンプ内のケースとロータ、そのほかの摺動部分の隙間を油膜で覆う役割があり、それにより潤滑性と気密性を保ちながら、高圧部から手圧部に気体が逆流しないようになっています。
水蒸気のような凝縮性のある気体が油に含まれてしまうと、部品腐食や油の潤滑性低下などを招き、故障の大きな原因になりかねません。また、減圧時に油に混ざった気体が再度蒸発することで、到達圧力が著しく低下するといった課題も抱えています。
省エネ・低騒音・コンパクトなどのメリットのある「スクロール型」、液体を使わずに手軽かつ高い利便性をもった「ダイアフラム型」、画期的なドライ真空ポンプとも言われている「ルーツ型」の3種類のドライ真空ポンプが活用されています。
近年では半導体の市場が拡大し、需要に供給が追い付いていない状態だといわれています。
半導体はスマートフォンやパソコン、家電、自動車などさまざまな製品に欠かせない存在です。巣ごもりやテレワーク、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業などを理由に半導体を用いた製品の需要が高まっており、半導体を多く製造する必要があります。
そのため、供給が追いついていない半導体の需要は長期的に高い水準で予想されています。よって、半導体製造に用いられる真空ポンプの需要も比例して上がるといえるでしょう。
このページでは、真空ポンプが半導体製造に必要な存在であることや、半導体の需要が高まっていることなどを紹介しました。
半導体製造にはクリーンな環境が求められますが、ドライ真空ポンプの活用によってクリーンな環境を更に実現しやすくなります。ドライ真空ポンプの特徴として「封止に水や油を使わない」という点があり、ポンプの使用によって真空側に水や油が逆流する・拡散するといったリスクがありません。
また、水や油の補充や交換も必要ないことから、ドライ真空ポンプは定期メンテナンスが不要。取り扱いの手間が省ける点もドライ真空ポンプをおすすめできる理由です。