油潤滑式と比べ、さまざまな場所で活躍できるドライ真空ポンプ。しかし、それだけに多くの機種があり、到達圧力や排気速度といった性能が異なります。
ここでは、ドライ真空ポンプを取り扱うことの多い【食品】【半導体】【薬品・化学品】の3つの業界に着目し、それぞれの業界に適した性能のドライ真空ポンプを紹介します。
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食品製造向け アネスト岩田の |
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半導体製造向け
宇野澤組鐵工所の |
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製薬・化学品製造向け
東製のスクリュー式 |
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上記3製品を取り扱っている各社の詳細は、下記からご確認いただけます。
DVSL-500E
排気速度 (50/60Hz) |
433/516 L/min |
到達圧力 (50/60Hz) |
≦30 |
電動機出力 (50/60Hz) |
0.9/1.1kW |
DVSL-100C-B
排気速度 (50/60Hz) |
100/120 L/min |
到達圧力 (50/60Hz) |
≦50 |
電動機出力 (50/60Hz) |
0.3kW |
世界に先駆けて空冷式オイルフリースクロール真空ポンプを開発し、真空ポンプを多様な市場で展開するアネスト岩田。特に食品市場では、製麺機の真空脱泡をはじめ、焼酎の真空蒸留、真空含浸による味付け等多くの用途で導入されています。
スクロール真空ポンプは、油回転式による食品への衛生問題や、水封式による真空度のばらつきといった課題を克服。また、用途や作業環境のニーズに応じてカスタマイズにも対応しています。台車の取付けや部品の材質変更など、他社では断られてしまった仕様変更も相談が可能です。
食品業界の導入実績が豊富なDVSLシリーズは、大気圧付近での連続運転、水蒸気排気にも強いタフなモデルです。冷却水や潤滑油を使用していないため、日常のメンテナンスは不要。高価な真空ポンプ用油や作業費といった保守点検のコストを大幅に軽減できます。
さらに1~2年ごとの定期整備や修理は一貫して自社で行っており、見積もり、送料、手数料、修理報告書は無料で対応。リーディングカンパニーならではの手厚いサポートを受けることができます。
老舗製麺機器メーカーへの真空技術導入
日本の麺文化をリードするさぬき麺機株式会社では、スクロール真空ポンプ「DVSLシリーズ」を使用して、麺の品質向上とフードロスの削減に取り組んでいます。
真空ポンプを用いることで、生地作りの過程で空気を排出し、グルテンの水和を促進することが可能。この技術により、麺生地は短時間で粘り強く仕上がり、冷凍麺などにおいても劣化を防ぎ、長期間の美味しさを保持できるようになりました。
さらに、製麺段階での真空処理は酸素や菌の減少にも寄与し、これがフードロス削減にも効果を発揮しています。
真空技術の導入は、食品安全と環境保全の両面で、業界に新たな価値をもたらしています。
KTSシリーズ
排気速度 | 280~5000 |
到達圧力 | ≦0.08~≦3 |
騒音値 | ≦56~≦72 |
TRVシリーズ
排気速度 (50/60Hz) |
10~9.5m3/min |
到達圧力 (50/60Hz) |
50~200Pa |
モータ (50/60Hz) |
2.2~15kW |
極めて制御された真空環境を求められる半導体製造において、真空ポンプは多くのプロセスで広く使用されています。半導体製造に適した真空状態(※)を実現したウノサワKTS型ドライ真空ポンプは、ドライ真空ポンプの実績と技術を基に"軽量&コンパクト"を追求して開発された空冷式ドライポンプ。
耐久性のある「ルーツ式」でメンテナンスサイクルが長く、水蒸気の排気が可能です。また、スパッタリング装置、イオンプレーティング装置といった薄膜形成プロセスにも対応しています。
※到達圧力:≦0.08Pa…KTS030-H(ECOタイプ)最大排気速度:500L/m、到達圧力:≦0.08Pa(2024/5/24時点)
1899年創業の宇野澤組鐵工所は、風水力機械の専業メーカーとして展開し、長きに渡って高品質の真空ポンプやブロワを生産してきた老舗メーカー。汎用品を生産することは稀で、多くは国内外の顧客のニーズに合わせた受注生産です。
また、宇野澤組鐵工所が生産するポンプの種類は非常に多く、真空から高圧、小型から大型まで、運転条件に応じた様々なポンプを製造しています。
公式サイトに導入事例の記載はありませんでした
スクリュー式ドライ真空ポンプ
実行排気速度 | 1100~3000L/min |
到達真空度 | 0.7~1.3Pa |
電動機定格 | 3.7×2~7.5×2kw×P |
大気圧から到達圧力0.1Pa台まで、幅広い圧力領域で連続運転ができる東製の「スクリュー式ドライ真空ポンプ」。低速運転で機械的な摩耗を最小限に抑え、低騒音化・低振動化を実現しています。
また、特殊コーティングされた接ガス部は優れた耐食性を発揮。少ない部品とシンプルな構造でメンテナンスがしやすいので、凝縮ガスや腐食性ガス等を排気する化学工業プロセスへの最適化を実現しています。
東製では、個性化、技術革新、アフターサービスを指針として、営業から設計・製作・メンテナンスまでトータルプランを提供しています。装置の納品後は担当者が現地を訪問し、装置の使い方や操作方法を指導。ZOOMやメール、電話などでの遠隔指導には無料で対応しているので、コスト面を気にする方には嬉しいポイントでしょう。
また1ヶ月後には無料点検を実施し、不具合などのトラブル対応は原因調査を行うなど、丁寧なアフターメンテナンスを提供しています。
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使用用途、スペック、価格、メンテナンス頻度。
自社に合ったドライ真空ポンプ製品の選び方とは?メーカーの方に直接お話を伺ってみました。
真空ポンプとは、真空状態をつくりだせるポンプのこと。容器内を大気圧以下の真空状態にし、その状態をキープするために容器内の気体を外へ排出します。さまざまな部品や製品の製造段階において真空状態の環境で作業を行う必要があるとき、真空ポンプは欠かせない存在です。
ドライ真空ポンプは真空ポンプの種類のひとつであり、「油を使用せずにクリーンな環境をつくりだせる真空ポンプ」として高い需要を得ています。
ドライ真空ポンプにはスクロール型やルーツ型、ダイアフラム型、回転翼型(ベーン型)などがあり、封止に油や液体を使わず、非接触でクリーンな真空状態をつくりだせます。
ドライ真空ポンプには、排気経路に油を使用しておらず、油回転真空ポンプに比べてよりクリーンな真空状態がキープできます。
潤滑油を使用しないため、クリーンな環境が求められる半導体産業や先端研究分野では必須といえるポンプでしょう。
また、食品業界などの安全性が優先される分野において、問題なく真空状態を作り出せることも大きなメリットです。
ドライ真空ポンプは、各タイプそれぞれに特性があり、さまざまな技術を生かして開発されています。
ここでは、ドライ真空ポンプの種類別に解説しています。業界や使用用途によって、理想的なドライ真空ポンプは何かをイメージしやすいと思いますので、導入の際のヒントにしてみてください。
スクロール型
「スクロール」と呼ばれる渦巻き状の部品が2つ組み合わさり、片方が旋回運動をすることによって排気を行う真空ポンプ。ドライ真空ポンプの中では部品点数が少なく構造がシンプルなため、メンテナンスが容易なことと、その構造からシール線が長く逆流が極めて少ないことなどがメリットです。
接ガス部だけでなく、ギアオイルなどを一切使用しない形で製造することができ、幅広い現場で使用されているタイプです。
ベーン型
ベーン(回転翼)を使用し、排気する真空ポンプ。基本的に油を使用しないドライベーン真空ポンプは到達圧力が低く、水分や腐食性ガスなどの排気にはあまり適しませんが、コストパフォーマンスに優れています。
吸着搬送など、あまり到達圧力が必要でない用途に適しています。
ルーツ型
まゆ型のローターを多段搭載して回転させる事により、排気を行う真空ポンプです。
半導体製造、真空蒸留、乾燥・脱水、殺菌・消毒などの分野で使われています。
クリーンな真空状態を作り出せるだけでなく、非接触式のため、メンテナンスサイクルが長いのも特徴です。
ダイアフラム型
ダイアフラム(弁)の上下運動を利用したタイプの真空ポンプです。吸入と吐出エリアに弁を設置し、同じ方向へ排気できるような構造で開発されています。
比較的、小型なタイプが多く、持ち運びの利便性が高いのも魅力です。
揺動ピストン型
組み込まれたピストンが偏心カムの働きによって往復運動することで気体を輸送します。構造がシンプルでメンテナンスしやすいのがメリット。低真空状態をつくりたいときの使用に向いており、加工成形や包装などの用途で使用されています。
クロー型
爪の形をした突起のある2本のローターがあるのが特徴。クローローターを逆回転させることで気体を圧縮しており、省エネルギーで真空状態をつくりだせます。真空包装のほか吸着搬送装置、シュリンク機などで活用されています。
グローバルな視野で展開
ドライ真空ポンプ1つにしてもシステムのコンサルや技術、効率性などを重視して展開。グローバルな視野を活かした開発をしています。
幅広いポンプ製品を用意
創業当時よりドライ真空ポンプの製造を行うイタリアメーカー。油回転ポンプやクローポンプも取り扱っています。
ドライ真空ポンプに関する基礎知識について紹介しています。
そもそもドライ真空ポンプとは?真空ポンプの種類は?ドライ真空ポンプの1段式と2段式の違いは?などの疑問について解説します。
オイル不使用であることから漏れや混入のリスクのないドライ真空ポンプ。クリーンな環境が必要な用途に向いており、吸着・輸送や加工・成形包装、不純物除去・膜形成などで活用されています。
幅広い分野で活用されているドライ真空ポンプですが、故障や不具合を防ぐためにはメンテナンスが重要です。日常点検や定期点検などを行いましょう。なお、ポンプの種類やメーカーによってもメンテナンス方法に違いがあります。
真空状態が必要な場合に使用されるポンプであり、容器内の気体を吸い込んで排出する構造になっています。気体輸送式と気体溜め込み式の2種類の動作原理に分類され、ドライ真空ポンプのほかにも油回転式や水封式などの種類があります。
半導体製造ではクリーンな環境が求められます。そこで真空ポンプを用いて真空状態をつくり、必要な反応のみを起こしやすくしています。また、プラズマ発生や蒸気圧を上げられるという特性から、半導体製造において真空ポンプは欠かせない存在となっています。
ドライ真空ポンプの選定を検討している場合、展示会に参加することは大きな助けとなります。展示会に参加することで、多種多様な製品を効率よく比較検討でき、実物を直接見て確かめられる上、専門家への問い合わせも可能となります。
インバーターとは、直流電流を交流電流に変換する電子回路で、家電や産業分野で重要な役割を果たしているものです。インバーターを搭載した真空ポンプのメリットには、効率向上、騒音低減、耐久性向上が含まれます。これにより、省エネルギーな運転や環境への影響軽減が実現されます。
ドライ真空ポンプのガスバラストバルブとは、凝縮性ガスを液体にせず、気体のままで大気中に廃棄できるようにする装備のことです。液体化を避けることで、シャフトシールの劣化予防にも貢献します。またよりクリーンな環境を目指すことにも役立つ装備であり、業務内での環境汚染を軽減させます。
ドライ真空ポンプは24時間365日稼働体制となる場合もあり、省エネ性能が高い製品が求められてきました。昨今では各メーカーがさまざまな工夫により省電力の製品を提供しており、既存のドライ真空ポンプに取り付けるだけのアタッチメントタイプのものも選択できます。
省スペース性を重視したドライ真空ポンプは、限られた設置面積でも設置しやすいこと、移設しやすいこと、コスト削減に役立つ可能性があることなど、多くのメリットがあります。各社から省スペースな製品が提供されているため、選択肢のひとつとして考えてください。
ドライ真空ポンプにおけるサーマルプロテクタとは、本体の過熱状態を防ぐためのものです。モーター巻線が一定の温度になると強制的に切断し、本体の温度を危険ではない状態に保つため、使用における不安を軽減してくれます。
ドライ真空ポンプは太陽電池製造でも必要とされています。反応副生成による負荷の高いプロセスに対応し、空気中のパウダー分・ミスト分を効率よく排気できるようになるためです。実際に太陽電池製造に適するとされるドライ真空ポンプも多数提供されています。
ドライ真空ポンプには「1段式」と「2段式」があり、さまざまな違いがあるため用途に合わせて選ばなければなりません。1段式のほうが到達圧力が高く、排気速度も大きいものの、目的によっては2段式の方が適していることもあります。
ドライ真空ポンプは不純物の混入を防ぎたいコーティング加工に適しており、薄膜コーティングがその代表的な例です。ソーラーパネルでは、太陽電池としての耐久性や反射防止機能を付加する際に、ドライ真空ポンプによるコーティングが行われています。
ドライ真空ポンプは、クリーンな真空を得るために必要な機器であり、油や水を使用しないため、逆流の心配もありません。ドライ真空ポンプにもさまざまな製品がありますが、今回紹介するのは水素排気に対応できるドライ真空ポンプです。
減圧に対応したドライ真空ポンプは、どの程度の減圧を必要とするかによって選ぶべき製品も異なります。製品ごとの減圧可能な数値などをチェックして、選定しましょう。減圧に対応した製品は小型のものも多く、持ち運び可能でコストが抑えられるドライ真空ポンプも多いです。
防爆仕様のドライ真空ポンプは、爆発の危険性がある場所で用いられています。食品工場や薬品工場などの工程によっては、爆発の危険性を考えて防爆仕様のポンプを使用しなくてはなりません。製品ごとに防爆性能も異なるため、用途と性能を照らし合わせて適したポンプを選定しましょう。防爆モータが別途取り付けられるポンプもあります。
ドライ真空ポンプは、定期的なメンテナンスと、定期的なオーバーホールが求められる機械です。特に分解・洗浄を目的としたオーバーホールを行うことで、内部パーツの不具合による故障をある程度避けることが可能になります。