不純物が少ないクリーンな環境が求められる半導体製造では、薄膜形成や加工などの用途でドライ真空ポンプが用いられています。真空下では大気圧下よりも不純物となる気体分子が少ない状態ですから、半導体製造において真空をつくりだせる真空ポンプは大いに役立っているのです。
また、真空状態によって発生するプラズマも欠かせません。プラズマが発生すると電子やイオンを用いたさまざまな反応を起こすことができ、薄膜形成やエッチング、ダイシング、クリーニングなどを行えます。
真空ポンプのなかでも封止に油や水を使用しないドライ真空ポンプを半導体製造に活用すれば、クリーンな環境をより実現しやすくなります。近年半導体市場は拡大しており供給が追いついていないといわれていますから、半導体とともにドライ真空ポンプの需要も高まっているようです。
なお、半導体は微細化に伴いプロセス工程が増加傾向にあるようです。そのためドライ真空ポンプの省エネルギー化も要求されており、各メーカーではニーズを満たす製品の開発が進められています。
分析・計測機器には電気化学分析装置や光分析装置、電磁気分析装置などさまざまな種類があります。なかでも電磁気分析装置にあたる走査電子顕微鏡は光学顕微鏡よりも高い分解能をもっており、半導体デバイスや医学、生物学など幅広い分野で活用されています。
走査電子顕微鏡では電子源から発生した電子をガス分子と衝突させずに試料に到達させる必要があるため、真空状態が求められます。そのため、走査電子顕微鏡本体を真空ポンプで真空状態に保っています。
また、ガスクロマトグラフ質量分析計では、分析計内部のイオンが自由に移動させるために真空状態が必要となります。そのため真空ポンプを使用し、イオンが検出器に到達できる真空状態をつくりだしています。
なお、計測・分析装置ではこれまで油回転真空ポンプが用いられていましたが、分析精度の向上や分析機器周辺のクリーン化などによってドライ真空ポンプの需要が高まっているようです。
真空ポンプは医療機器の製造過程や医療機器などに用いられています。たとえば歯科医療で用いる唾液の吸引機や有機溶剤や腐食性ガスの吸引、ガス分析、ろ過、循環、コンプレッサーなどが用途として挙げられるでしょう。
ドライ真空ポンプは油や水を封止に使用しないことから、クリーンな環境づくりが可能。また、定期メンテナンスが不要であり、お手入れも簡単である点、低騒音・低振動を実現できる点もドライ真空ポンプのメリットです。さらに省エネルギー化を実現する技術開発も行われており、ドライ真空ポンプの需要は高まっています。
自動車産業では部品の吸着搬送や射出成型、ガス置換・回収、真空洗浄、真空熱処理炉、熱交換器のろう付け、真空引きなどさまざまな用途で真空ポンプが用いられています。
なかでも自動車用熱交換器のろう付けではドライ真空ポンプが活躍しており、油封式ポンプでは腐食リスクを抱えていたものの、ドライ真空ポンプでは腐食リスクを軽減しています。また、自動車の真空洗浄では超音波洗浄工程や真空乾燥工程においてドライ真空ポンプが用いられています。
金属冶金産業では熱処理やろう付け、溶接、コーティングなどの用途で真空ポンプが用いられています。金属冶金のプロセスでは大量の粉塵や破片を処理する必要があり、真空ポンプが役立っています。
ドライ真空ポンプは封止に水や油を使わず補充や交換といったメンテナンスが必要ないため、手間をかけずに運用できるメリットがあります。
ドライ真空ポンプは食品産業でも幅広く用いられています。たとえば真空吸着搬送や生鮮食品などの真空包装、製麺機などの真空脱泡、野菜や果物などの真空乾燥、真空冷却、真空蒸留や真空含浸による味付けなどが挙げられるでしょう。
ドライ真空ポンプはクリーンな排気を得られるため、高いクリーン度が求められる食品産業分野でも活躍しています。