ドライ真空ポンプのトラブル

なぜ破損や故障などのトラブルが起こるのか

ドライポンプの破損や故障はさまざまな要因によって起こります。

  • 長期継続運転したことによる経年劣化
  • 反応性(凝縮性・腐食性)の高いガスの排気
  • 温度の影響によりポンプ内部でガスが固形化
  • 腐食性ガスを吸い込むことによるロータ・ケーシングの減肉
  • ドライポンプに供給される冷却水等の流量低下

ただし、ポンプの破損や故障は突然起こるのではなく、予兆がみられることがほとんど。そのためポンプの状態を常に観察し、破損や故障の予兆を見逃さないことが大切です。

真空度または排気圧が上がらない場合の原因

真空度または排気圧が上がらない場合の原因としては、以下のことが考えられます。

  • フィルターエレメントにゴミが詰まっている
  • ポンプに油または異物が入ってブレードが飛び出さない
  • 水分などの吸入でポンプ内部が錆びている
  • 計器の故障
  • フィルターケース・配管・真空タンクなどの締付けが悪くて空気が漏れている
  • モーターの故障によるポンプ回転数の低下
  • ブレードの破損または摩耗

実際のトラブル事例

ポンプに異常音が発生しロックした

使用中に異常音が発生し、ロックしてしまった事例です。ポンプの停止後に配管内残圧があり、逆回転が発生したことが原因でした。ロックしただけではなくブレードも破損。対策としてポンプ吸気口と配管の間に逆止弁を設置し、ブレードを保護しました。

ポンプ本体が変色し、ロックした

ポンプの本体が変色し、ロックしてしまった事例です。原因は常用真空圧力を超えての運転でした。ポンプを使用するときは、仕様表に記載されている常用真空圧力以上での運転は故障の原因となります。そのため仕様表の圧力を超えての使用は避けましょう。
なお、ポンプ機種によってはコントローラにストッパーを取り付けることで圧力の上がりすぎを防ぐことができます。

ポンプから異常音が発生

ポンプから「ピー」という異常音が発生し、不具合が生じた事例です。異常音の原因はマフラーケースにあるノブナットの緩みでした。そのため、フィルターを交換した後マフラーケースの上下を確認。正しく取り付けてからノブナットを確実に締めるという対処を行いました。

サイレントボックス内のポンプがロックした

サイレントボックス内にあるポンプがロックしてしまった事例です。不具合を引き起こした根本的な原因は、換気ファンの故障でした。換気ファンの故障によってボックス内の温度が上昇したことでポンプのベアリングのグリースが流出。ポンプのロックにつながりました。
対策としては警報回路の設置が必要。サイレントボックス内には温度サーモスタットを活用できます。また、ポンプの取扱説明書には回路図が記載されていますので参考にしましょう。

サイドチャネルブロワの異常

サイドチャネルブロワに異常が発生してしまった事例です。異物を吸引したことでブロワがロックし過負荷となりました。その結果モータが焼損し、煙や異常音も発生しました。
異物吸引を防止するためにはエアーフィルタの設置が有効です。さらに逃し弁や穴を設置し、吐出圧力や真空圧力を超えないようにすることも大切。サーマルリレーの設置も必要です。

バキュームコントローラの作動不良

バキュームコントローラの作動に不具合が生じてしまった事例です。この事例ではコントローラの取り付け時にシールテープを使用しており、締めすぎとなっていました。そのためネジ部とその内部が変形しており、圧力が上昇しコントローラの作動不良を引き起こしました。
そのため、コントローラ取り付け時にはシールテープの使用を避ける必要があります。メーカーでは同様の事例が発生しないよう、コントローラ梱包部に注意書を添付するなどの工夫をしています。

トラブルを防ぐためにできること

ドライ真空ポンプは高価な機器のため、故障したとしても簡単に買い直すということはできません。そのため、なるべくトラブルが起きないように、定期的な点検とメンテナンスを行うことが重要です。ただ、ドライ真空ポンプにはさまざまな種類があるほか、製造しているメーカーによってメンテナンスの方法が異なります。

適切な点検とメンテナンスを行うには、ドライ真空ポンプに精通している業者に依頼するのがおすすめです。そのため、ドライ真空ポンプを選ぶ際は性能のほかに、業者の対応力についてもチェックしておくと良いでしょう。

関連記事一覧
オイル不使用・幅広く使えるスクロール型
ドライ真空ポンプメーカー3選

▼横にスクロールできます▼

食品製造向け

アネスト岩田の
DVSLシリーズ

DVSLシリーズ

引用元:アネスト岩田公式HP
(https://www.anest-iwata.co.jp/products-and-support/vacuum-equipment/dry-vacuum-pump/dvsl-500e)

  • 排気経路内にベアリングが無いため、密閉性が向上し衛生面も安心
  • 真空状態でのネリが必要な製麺会社の要望に応えた実例あり
半導体製造向け

宇野澤組鐵工所の
KTSシリーズ

KTSシリーズ

引用元:宇野澤組鐵工所公式HP
(https://www.unozawa.co.jp/product/dry/)

  • 到達圧力:≦0.08Paという半導体製造に適した真空状態を実現
    ※KTS030-H(ECOタイプ)最大排気速度:500L/m、到達圧力:≦0.08Pa(2024/5/24時点)
  • スパッタリング装置、イオンプレーティング装置といった薄膜形成プロセスに対応
  • 水蒸気やミストといった小さな水滴もしっかり排出
製薬・化学品製造向け

東製のスクリュー式
ドライ真空ポンプ

スクリュー式ドライ真空ポンプ

引用元:東製HP
(https://www.dryvacuum-pump.com/wp/wp-content/uploads/anestiwata_dvsl-500e_image.png)

  • 化学反応、蒸留操作などに適した環境生成のため、さまざまな圧力領域に対応
  • 接ガス部は耐食性ガス対策のため、特殊コーティングすることにより錆から守る
  • 化学物質や粉塵の発生を考慮し、少ない部品で分解・組立・洗浄が可能
さまざまな真空装置にフィットする スクロール型ドライ真空ポンプのメーカーに注目!

接ガス部だけでなく、各部にギアオイルなども使用していないスクロール型のドライ真空ポンプは、さまざまな使用環境に幅広く対応できるメリットをもっています。
このサイトでは、スクロール型の真空ポンプを扱っているメーカーを、サービスの多様さで比較しています。