真空ポンプは食品製造においても幅広い用途で利用されています。真空調理、真空麺、真空包装、真空パック、真空蒸留など、今や真空ポンプは食品製造に必要不可欠なツールと言っていいでしょう。ここではそんな食品製造における真空ポンプの必要性について紹介していきます。
うどん、ラーメンなどの製麺機に備わっている真空脱泡は、液材中の気体(気泡)を取り除くシステムですが、この真空脱泡の工程は真空ポンプによって行われています。真空調理で保存容器の中を真空状態にするのも真空ポンプです。
食品の安全性の向上に貢献する真空冷却装置は、加熱調理後の食品を減圧することで食品の水分を蒸発させ、均一な急速冷却を可能にしています。この真空冷却で減圧状態を作り出しているのも真空ポンプです。
焼酎の真空蒸留(減圧蒸留)は、蒸留器の中の気圧を小さくして蒸留する方式です。減圧状態で蒸留することにより、口当たりの良い軽やかな味わいの本格焼酎をつくることができます。この焼酎の真空蒸留で減圧状態を作り出しているのも真空ポンプです。
油回転式真空ポンプは内部に油が充填されているのが特徴で、低いイニシャルコストで安定した排気性能を発揮する優れたポンプです。一方で、運転時に排気口から油煙が発生するため、食品製造工程で使用する場合は作業環境汚染や食品への悪影響が懸念されます。また、水分の多い食品製造工程で使用すると吸引した水分が油を乳化させてしまい、頻繁に油の交換が必要になるといった課題もあり。そういった理由から、食品製造工程で使用するポンプとしては不向きと言えるでしょう。
水封式真空ポンプは内部に水を入れ、インペラ(羽車)を回転させることで吸排気を行ない、真空状態をつくりだす回転式ポンプです。水滴・水蒸気を含む気体を吸引しても性能に影響しないことから、水分の多い食品製造工程のような環境に適しています。一方で、ポンプの性能を維持するには内部の水の適切な温度管理が求められ、設置する際に大がかりな配管設備が必要です。水温がポンプの性能に影響するため、安定した真空度を得るのが難しいといった課題があります。
製麺メーカーにおいて、麺製品を製造する工程にドライ真空ポンプが活用されています。
製麺工程では小麦粉と水を混ぜて練り、生地を作る工程が必要になりますが、この時にドライ真空ポンプで攪拌用ミキサーの内部の空気を吸引・排出することにより、生地に含まれている空気もまとめて除外することが可能となります。
その結果、生地への塩水の浸透率が高まり、小麦粉のグルテンを効率的に反応させてコシの強い麺を短時間で製造できるようになったそうです。
焼酎製造における減圧蒸留において重要な役割を担っています。真空状態を作り出して蒸留の沸点を大幅に下げることが可能となり、通常よりもはるかに低い温度で蒸留を行うことができます。
低温蒸留の最大の利点は、熱に敏感な風味成分や香りが破壊にくいことです。芋や麦など風味を大切にする原料を使用する際に有効で、素材の純粋なエッセンスを焼酎に移すことができます。
ドライ真空ポンプを使用することで、伝統的な蒸留法と比べてより柔らかく、香り高い蒸留酒を効率良く生産することが可能になると言われています。高品質なスピリッツの製造には欠かせない技術として、現代の酒造業界で広く採用されています。
食品製造工程向けに適した真空ポンプは、用途に合わせて選ぶことが大切です。真空ポンプを使って何をしたいのでしょうか?インスタントラーメンの凍結真空乾燥、卵のパック詰めなど真空吸着、焼酎やウイスキーの蒸留、酸化防止のための真空パック、うどんやラーメンの脱気・脱泡など、食品製造に用いる真空ポンプの用途は様々です。用途を明確にすることで、ニーズに合った真空ポンプが分かるようになります。
仕様に関しては、真空度、ポンプの流量、化学的適合性、潤滑油は必要か否か、といった点をチェックしましょう。中でも大事なのは真空度です。真空度が変わると真空の質も変わります。真空度は「中真空」「高真空」「超高真空」と3段階のレベルに分類され、1cm3あたりの分子数が少ないほど圧力が低く、真空の質は高まります。3段階のレベルの内、真空度が最も低いのは「中真空」、最も高いのは「超高真空」です。
食品製造工程でよりクリーンな環境と排気を実現したいと考えるなら、ドライ真空ポンプがおすすめです。ドライ真空ポンプは、真空室内でアブやら液体を使用しないオイルフリーの真空ポンプです。機械式ながらオイルレスで減圧状態を作り出すことができるので、クリーンな排気ができるだけでなく、オイルの補充・交換、定期メンテナンスも不要です。