化学業界では、化合物の合成後の有機溶媒を留去する際や容器内部を不活性ガスに置換する目的などで、真空ポンプが使用されています。研究分野において真空ポンプはなくてはならない存在になっており、その活用方法について注目してみました。
真空蒸留は化学業界において重要なプロセスで、沸点が高い化合物や爆発性の化合物を分離する場合に適用されます。
たとえばアルコールを蒸留したい場合、真空ポンプを使って沸点の違いを利用しながら真空度をコントロールすることにより、温度をあまり上げずにアルコール成分のみを気化・蒸留することが可能です。真空蒸留は、アルコールのような高温だと成分が変質してしまう物質の抽出に適しています。
真空乾燥は化学品の乾燥工程に使用される方法で、減圧によって洗浄溶媒の蒸発を促すのが特徴です。急速な減圧によって洗浄溶媒が瞬間的に沸騰(突沸)することで、より速く乾燥させることが可能。また、突沸を利用することにより、部品の狭い隙間や無貫通穴の内部に入り込んだ洗浄溶媒を除去できます。
化学プラントでは可燃性流体を取り扱うことがあり、移送するポンプを慎重に選ばないと爆発する危険性があります。真空ポンプのなかでも液封式真空ポンプは、漏れがないように液膜によって完全にシールされているため、爆発性のある可燃性ガス(溶剤系)や腐食性の高いガスの吸引・圧縮に適しています。また、水封式真空ポンプも可燃性ガスや腐食性ガスの排気が可能です。
真空ポンプのなかには化学プラントの溶剤(溶媒)回収に特化したものもあります。溶剤回収型の真空ポンプを使って大気中に放出された溶剤を吸引することにより、大気圧力下によって効率的に排出・回収することが可能。ドライ真空ポンプだと回収した溶剤に異物が混入するのを防ぎ、純度を高めることができます。化学プラントで使用するなら、耐食性・耐薬品性に優れた材質のものを選ぶと良いでしょう。
化学業界における真空ポンプの課題は“壊れやすさ”です。化学業界で使用される真空ポンプが壊れやすい原因としては、オイルに水や有機溶媒、酸が混入してしまうことが考えられます。オイルに水や溶媒が混入するとポンプ内部が錆びやすくなってしまうほか、酸によってオイルの重合が促進され、高粘度物質ができることで真空ポンプの動作を阻害している可能性があります。
真空ポンプの故障は修理費用が発生するほか、実験・研究の進捗にも影響を及ぼしかねません。故障頻度を下げるためには、水・溶媒・酸がオイルに混入しないようにしたり、オイル交換の頻度を増やしたりなどの対策を講じる必要があります。
化学業界に適した真空ポンプは、どういった用途で導入を検討しているのかによって変わってきます。真空ポンプとひと口にいってもさまざまな種類があり、それぞれでメリット・デメリットも異なるからです。自社に合った真空ポンプを導入するのであれば、自社の抱えている課題や使用環境などに応じて最適な製品を提案してくれるメーカーに相談することをおすすめします。
真空ポンプにはさまざまな種類がありますが、よりクリーンな環境を実現するならドライ真空ポンプがおすすめです。ドライ真空ポンプは封止に水や油を使わないのが特徴で、水や油が混入するといった心配はありません。また、水や油を拡充・交換する手間がかからず、定期メンテナンスも不要です。
真空ポンプの導入でよりクリーンな環境を実現したい、取り扱いの手間がかからない真空ポンプを導入したい場合は、ドライ真空ポンプを検討してみてください。