真空ポンプは製薬産業にとってなくてはならない機器です。各社より医薬産業用途の真空ポンプ製品が提供されています。このページでは、製薬産業における真空ポンプの必要性について説明しますので、参考にしてみてください。
医薬品の製造プロセスには、「真空乾燥工程」と呼ばれるものがあります。医薬品の品質の安定性を守ることを目的として、薬品成分に付着した微量の水分を除去する工程です。同工程は真空技術による真空排気システムを用いて行われますが、この真空排気システムの一端を構成しているのは真空ポンプです。真空ポンプが大気圧を圧縮して真空状態を作り出し、真空領域での乾燥処理が行えるようにしています。
無菌医薬品の製造工程においては、真空環境で減菌処理が行われ薬品を無菌充填するプロセスがあります。真空中で減菌処理を行うことにより、薬品のみならず充填空間も無菌状態になるという、製薬業界ならではの包装技術です。この真空中における減菌プロセスを下支えしているのも、真空ポンプです。真空ポンプが減菌室内を減圧して空気を排出し、真空環境を作り出しています。
製薬産業で使用される有機溶剤は、他の物質を溶かす性質を持った腐食性の高い有機化合物です。水蒸気や有機溶剤を含む気体をポンプで扱う場合、耐食性の高いポンプでないと内部が腐食し、故障するリスクが高くなります。ポンプが腐食した場合、内部の材質が溶けたりサビが進行したりして強度を保てなくなり、亀裂や破損が発生。真空状態を維持できず、安定した性能を発揮できません。また、ポンプの交換や補修を頻繁に行なうことで、ランニングコストや手間がかかるといった課題もあります。
ポンプの故障によって、真空状態を作り出すのに必要な流量や吐出圧といったポンプの性能が低下する場合があります。ポンプの種類によって原因が異なるので一概には言えませんが、よくある原因としては呼び水がされていない、仕切弁が閉じている又は半開きの状態、電圧の低下、ストレーナー・フート弁・配管の詰まり、吐き出し配管に空気が溜まっているなど。
また、ポンプの経年劣化によって性能が低下している可能性も考えられます。ポンプの性能低下は医薬品の品質にもかかわるため、性能が低下していると感じたらポンプを購入したメーカーや修理業者に相談しましょう。
製薬産業に適した真空ポンプの選ぶためには、用途に合った製品を選ぶことが大切です。製薬産業向けに真空ポンプを用いる用途には、薬品の真空凍結乾燥、真空減菌、真空搬送といったものがありますが、どのような用途に用いるかを明確にすることで、業務に合った製品を選ぶことができます。
仕様に関して考慮すべきは、真空度、ポンプの流量、化学的適合性、耐薬品性、潤滑油(必要か否か)、メンテナンス性などです。この中で、特に真空度は注意深くチェックする必要があります。真空度は「中真空」「高真空」「超高真空」の3つのレベルに分けられ1cm3あたりの分子数が少ないほど真空度が高まります。3つのレベルでは、①超高真空、②高真空、③中真空の順番で真空度が高いです。
医薬品の製造プロセスにおける真空システムでは、高い気密性が求められているので、その実現性を左右する真空度についてはしっかりチェックしておきたいところです。
どうせ真空ポンプを使うなら、環境に優しいクリーンな排気を実現したい、と考える方も多いでしょう。そういう方におすすめなのが、ドライ真空ポンプです。ドライ真空ポンプは油や封液を使用しないクリーンな排気を可能とする機械式の真空ポンプです。
環境に優しいだけでなく、オイル交換が不要になるメンテフリー、導入がしやすいなどの多くのメリットがあり、近年注目されています。ドライ真空ポンプは、より高い衛生基準と清潔さが求められる、製薬産業にもおすすめの製品です。